あの女の人、待ち合わせにしては長い間あそこに居るなぁ。 そう思っていると、すまなそうにしながら体躯のいい男が来た。 耳をそばだてていると、過激派がどうしたとか哨戒任務が増えたとか聞こえてきた。軍人だろうか？ …声をかけなくてよかった。
	これから生まれる子の為に妻が編み物を始めた。 「愛情たっぷりに育てようね」 編み物をしながらそう呟く彼女を見ていると、絶対に守り抜こうと改めて思う。
	初めての子供は娘だった。 どこかの国では一姫二太郎なんていうらしいし、よかったのか。 それにしても…授乳って、いいよな。
	久しぶりの我が家、この前まで乳をすっていた娘は いつの間にか絵本を楽しむまでに育っていた。やっぱり数ヶ月のブランクは大きいな。 …はなをなくしたゾウさん？何でまた鼻なんかなくしちまったんだろうな。 最近の絵本ってのは、中々にシュールだ。
	連絡でわかってはいたけど、身ごもった妻のお腹を見るとなんだか感慨深いな。 二人目は息子だろうか。だとしたら大きくなったら酒を酌み交わしたりしたいな。 娘は姉になるということや、新しい家族とが増えるということに興奮しっぱなしだ。 久々に帰ってきた俺よりも、ね。　やっぱり寂しい思いをさせちゃってるのだろうかと思うと…。
	狭い風呂だというのに家族そろっての入浴はいささか無茶だったろうか。 でも長女のはしゃぎっぷりを見ていると、こういうのも悪くはないなと思う。
	お姉さん然としようとしているのか、妹をよくかまっているようだ。 俺の顔をじっと見てるけど、見たことのない珍しい人が居ると思ってるんだろうか。 どうにか長期休暇をとって家族サービスに徹したいもんだ。
	家族写真を撮るなんて依頼は久しぶりだ。最近はデジカメやらで簡単に家で編集できるからなぁ。 それにしても、仲がよさそうで見ていてなんとも羨ましくなる家族だなぁ。 …旦那さんは軍人さんかぁ。 怪しい雲行きだもんなぁ。写真も残したくなるわなぁ。
	家族そろっての外出でもしようとしたら手編みの防寒具を持ってきた。 妻の編み物も堂に入ったもので、中々に素晴らしい出来栄えだな。 ちょっと古めかしい肩掛けだから新しい肩掛けを作ればいいじゃないかと言ったら 『あなたが買ってくれたものだから。』とさ。
	たしかにプレゼントしたものの事を忘れた自分が悪かった！ でも、こんな荷に買い物しなくてもいいじゃあないか。重いよ！！

	娘二人に母親、なんとも女だらけな一行が。 何が気になるんだろう？ …犬か？ 母親にしたら、手間のかかるのが増えようとしてるところにさらに増えられちゃ困るもんなぁ。
	（さっき、見たことのないおじさんがくっつけていた物が気になるのかな？ 自分も気になるけど、鎖のせいで届かないんだよなぁ…。吠えたら怒られるし…。) ワン！

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